総合型選抜(旧・AO入試)が増えている3つの理由:大学入試・推薦の時代

 

★総合型選抜(旧・AO入試)が増えている3つの理由★

1 入学後の成績がAO入試(総合型選抜)の方が高い:理念

2 大学としては年内に学生を確保したい:家庭も「受験は年内」:現実

3 脱「学力偏重」や「探求」重視のトレンドに合う

 

総合型選抜(旧・AO入試)が増えている3つの理由:大学入試・推薦の時代

1 入学後の成績がAO入試(総合型選抜)の方が高い:理念

総合型選抜が増えている一つの理由として、

入学後の成績がAO入試(総合型選抜)による入学者の方が高い

という点があげられます。

 

例えば、東北大学の副学長(当時)が朝日新聞の記事で自らこう言っています。

東北大・滝澤博胤副学長「AO入学者の学業成績がいい理由」

「4年間のGPA平均を見ると、20年度卒業生で一般入試前期2.52に対して、

AOⅡ期2.72、AOⅢ期2.74です。12年度以降の卒業生のデータでは、AO入学者

のGPAが高いのはどの年度も変わりません(グラフ)。

特に文系学部では、AOⅡ期と一般入試前期との差が大きく開いています。

また、20年度卒業者を対象にした調査では、「大学生活における学習の重要度」

「大学で学んだことの総合満足度」などもAO入学者の方が高く、「自分の能力の

評価」では、文章表現の能力、プレゼンテーション能力で、一般入試前期と差が

ついています。」

出典:https://www.asahi.com/edua/article/14543703?utm_source=chatgpt.com

「AO入試で入る学生は、入学後もはつらつとしていて、意欲と熱意を持続して

います。一生懸命に勉強して入った学生は入学した時点で一息つきますが、

AO入学者はいよいよこれから大学生活が始まると考えます。その違いが一番

大きいです。

AO入試で入る学生も、一般入試で入る学生も、能力にそれほど大きな違いはな

いと思いますが、大学での学びへの意欲の差がスタート時点で出ています。」

AO入試の志願者は、ほとんどが一般選抜にも出願します。AO入試で不合格

になり、一般選抜で合格する受験生が例年300人前後います。一般選抜を目標

に勉強している受験生が、その過程でAO入試にも出願しています。」

出典:https://www.asahi.com/edua/article/14543703?p=2

 

東北大・滝澤博胤副学長の話はとても重要です。

一方で、国立大学+旧帝大というブランドを考えると、そもそも、東北大学は

とても優れた高校生や浪人生を囲いやすいという部分もあるでしょう。

この話を、全ての私立大学(特にMARCH未満の大学)に敷衍する事は難しい

かと思います。

とはいえ、総合型選抜がうまく機能すると、「基礎学力があり、同時に探求的な

熱量も高い学生」が集まり、東北大学のようないい循環が起こる可能性が

あるという事は言えそうです。

 

2 大学としては年内に学生を確保したい:家庭も「受験は年内」:現実

新聞が商売である如く大学も商売である。新聞が下卑(げび)た商売で

あれば大学も下卑た商売である。只個人として営業しているのと、 御上で

御営業になるのとの差だけである。」

(夏目漱石:朝日新聞・入社の辞)

 

漱石の頃は大学=帝国大学なので「御上」となっていますが、今はほとんどが

私立大学です。

そうです、大学も商売です。

特に私立大学は半分以上はビジネスです。

客(学生)がいなければ経営が成り立ちません。少子化の時代、大学進学率が

上がるか、リスキリングのような形で高年齢層が大学に入ってくるか、留学生を

増やすかといった形を取らないと、大学運営ができなくなるのは火を見るよりも

明らかです。

 

・大学としては「年内に進学確定する学生」を確保できる

・受験生や家庭も「年内に進学先を確定できる」のは大きい

 

この二点は大事です。

 

とはいえ、ぶっちゃけた話をすれば、ご存じのように大学といっても色々です。

大学によって

大学としては「年内に進学確定する学生」を確保できる

の意味合いは異なります。

私立大学で言うと、いわゆるFラン大学とされる大学は、

★読書感想文を書けば、総合型選抜で年内に合格できる★

ような所も実際に存在します。

大学も商売ですからね。

ですが、私立大学の最難関、早稲田大学や慶応大学のような所は、

大学としては「年内に進学確定する学生」を確保できる

の意味合いが全く異なります。

早慶のような大学は、

★本当に優秀な学生(高校生)を確保するため★

に総合型選抜を使っています。

例えば、早慶レベル+総合型選抜ですと、英語資格で言うと

「英検準1級(CEFRでB2以上)以上がスタート地点」になっています。

高校生、それも高3の9月頃に英検準1級ですので、その時点でかなりの

層が足切りされます。

 

ですので、同じ、

大学としては「年内に進学確定する学生」を確保できる

といっても、大学のレベルに応じて、その意味合いは全く異なります。

総合型選抜を人数合わせに使っている大学も存在していますので、その辺りは

確認が必要でしょう。

とはいえ、ここをお読みの方が知りたいのは、

★学力ではとても入れないけど、総合型選抜なら運よく入れそうな大学は?★

という事でしょう。

総合型選抜自体が、まだ過渡期ですので、部分的にはザル試験であったこともあります。

2026年度入試時点では、それぞれの大学もデータを蓄積してきてザルの網を少なく

している状況です。

率直に言うと、

★GMARCHの総合型選抜はまだ「ザル」部分がなくはない★

★早慶は網目はかなり狭くなっている:受かる子はやはり「それなり」★

★日東駒専未満は総合型選抜は(勉強不得意でも)「いくらでも狙える」★

と私は思います。国公立大学に関しては、基本はMARCH以上で、あとは

いわゆる一般選抜の偏差値に比例していると考えておいて良いかと思います。

 

3 「脱学力偏重」や「探求」重視のトレンドに合う

この点は多分に理念的ではあります。

一般選抜(一般入試)が、あまりにも傾向と対策をされすぎて、

結果として、最難関大学(まあ東大としましょう)では、

★模範解答を作るのに特化した中高一貫校出身者ばかり★

(いわゆる「受験サイボーグ」ですね)

となってきつつあるのは否定できない現実です。

そこから、「脱学力偏重」となってきています。

 

従来の一般入試は筆記試験中心=「短時間で測れる学力」が重視されていました。

しかし、それで選ばれる子たちは

  • 思考力

  • 表現力

  • 協働力

  • リーダーシップ

  • 社会活動

などが足りていないと良く言われていました。まあ広い意味での「コミュ力」

ですよね。

総合型選抜(AO入試)はまさに「人物評価・経験評価」を重視するため、

この「脱学力偏重」の流れに完全に一致します。

 

また、2022年度から「総合的な探究の時間」が本格導入され、

高校教育改革(探究の必修化)という流れになっています。

総合型選抜(AO入試)は、いわば、

 

【受験者の「探求」への熱量×大学・学部・学科とのマッチング×プロデュース力】

 

が合否の決め手になります。

ですので、本当の意味での探求(真に熱量をもってやりたいかどうか)が大事ですね。

「実績作りのためのボランティア」とか、さすがに世間知らずの大学のセンセでも

聞き飽きたのではないかと思いますよ…。

 

まとめ:総合型選抜(旧・AO入試)が増えている3つの理由

★総合型選抜(旧・AO入試)が増えている3つの理由★

1 入学後の成績がAO入試(総合型選抜)の方が高い:理念

2 大学としては年内に学生を確保したい:家庭も「受験は年内」:現実

3 脱「学力偏重」や「探求」重視のトレンドに合う

 

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